次に医療費についてみてみる。ところで、医療費という言葉に出くわした人は、医療費とは費用のことかと思う。病院(医療機関)から見ると医療費は費用ではなく収益である。会社でいうと自社の売上は、モノやサービスを購入した他社から見ると費用である。
病院にとって医療が費用(支出)と言われると何となく違和感があるのは、表裏の関係にあるものの「裏」ばかり強調されているような気がするからである。
では誰にとっての費用か。国(国民)である。医療費は、英語でHealth expendituresという。expenditures は、多少耳なじみのあるexpensesと似ているが、expendituresは特定目的の大規模な支出をいうようだ。
医療費の全体像も意外とわかりにくい。国民医療費であったり、社会保障給付費であったり、さらに国際比較もOECDのGDP比や対国民所得比もある。国の統計も、厚生労働省、財務省、国立社会保障・人口問題研究所などから出ている。どこの誰の集計がもとになっているのだろう。ちなみに国立社会保障・人口問題研究所が作成している「社会保障給付費」の統計は、今は「社会保障費用統計」というそうだ。
平成25年11月14日付厚労省ホームページの、2011(平成23)年度の国民医療費は38兆5,850億円、前年度の37兆4,202億円に比べ1兆1,648億円、3.1%の増加となっている。
平成25年12月6日付国立社会保障・人口問題研究所ホームページの2011(平成23)年度「社会保障費用統計」の社会保障給付費の「医療」は34兆634億円。「医療」の対前年度伸び率は3.5%である。
国民医療費>社会保障給付費の「医療」ということがわかる。その差の正体は不明であるが、社会保障給付費の方は国際基準(国際労働機関ILO)をもとに作られている。財務省の医療統計は社会保障給付費を採用している。厚労省も「年金」「福祉その他」を含めた長期統計は社会保障給付費を用いている。
社会保障制度改革国民会議ならびに関連する法令では、どうも社会保障給付費の医療費を用いているようだ。これは「年金」「福祉その他」と「医療」の3点セットで示す方がわかりやすいのと、国際比較に適しているからか。正確なところはわからない。
医療費適正化計画でいう医療費はどうも国民医療費のことのようだ。ところで医療費適正化計画自体を何となく忘れてしまった医療関係者はいないだろうか。厚労省のホームページで見ると「医療制度改革に関する情報」とあり医療制度改革関連のことなのだが。ちなみに医療費適正化計画は「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づくものだ。旧称は「老人保健法」である。
いずれにしても病院にとってマクロ統計は押さえておかなければならないが、あまり深みに入ると数字(値)の感覚がマヒしてくることに要注意。病院経営が扱う数字(値)は一桁から始まる。
この手のマクロ統計は、厚労省ホームページなどから資料入手がしやすくなったせいか、病院経営セミナーと称して、マクロ環境の説明と最新の改正法や診療報酬改定に触れてほぼ終わりというものが多いような気がする。それならば「病院経営環境セミナー」とすればよいのに。それともその先は自院で考えなさいというメッセージなのか。
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